当相談室における心理援助でもっとも大事にしているのは、オープンダイアローグにおける「対話」の考え方です。
オープンダイアローグ発祥の地であるフィンランドのケロプダス病院では、1984年8月27日、「クライアントのことについて、スタッフだけで話すのをやめる」という取り決めが交わされました。
この日を境に、治療ミーティングは原則として、クライアントと複数スタッフでなされることになりました。
対話の場が治療方針を決めていく場所となり、スタッフだけで方針を決める場は不要になりました。
この一日で、何もかもが変わったといいます。
精神科医療が身近でない方にとっては、「当たり前のことでは」と思われるかもしれません。
しかし、今の日本では、スタッフ間だけで話し合って治療方針を決め、医師の指示のもとに治療が進んでいくことや、本人の意思に反した強制入院、長期間退院できずに何年も入院しなければならないことなどが、むしろ当たり前であるのが現状です。
オープンダイアローグは、そういった精神科医療の在り方を変える「サービス提供システム」であり、「世界観」であり、そして「対話実践」です。
私たちは、クライエントの方のニーズに応じた支援をできる限り考え提供します。
相談室に来られなければ私たちがうかがいます。ケースワークが必要ならそれができる体制をつくります。
24時間対応はできませんが、連絡があればできるだけ早く対応します。
私たちの考えをおしつけることはせず、対話の場で出されたさまざまな発言を大事にします。
そこに参加するすべての人にとって安全で安心できる場になるようにします。
精神科医療の現場でそういったことが当たり前にできるようになるまでには、まだ時間がかかるようです。
なので私たちは、医療から少しだけ離れた場所で、私たちができることからやっていこうと思っています。
同時に、精神科医療の当たり前が変わってくれることを願い、医療のなかからも少しずつ変化の動きを起こしていきたいと思っています。